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著作権法の基礎知識

著作権の基本を概説するページです。著作権法入門、著作権の基礎と実務的に注意すべきポイントを解説します。

著作権法入門、著作権の基礎と実務的に注意すべきポイントを解説します。
知的財産権のひとつ、著作権について基礎から解説するページです。

知的財産権の概要

著作権知的財産権の一部を構成する権利です。ここでは知的財産権を構成する要素を概観しておきます。

知的財産権著作権産業財産権特許権実用新案権意匠権商標権その他の法律により規定される権利
知的財産権の構成

知的財産権は、「知的所有権」や「無体財産権」と呼ばれることもあります。経営の視点で見るときには、知的資産の要部を成すと言えます。産業財産権は、従来「工業所有権」と呼ばれていました(現在でもそう呼ばれることがあります)。

知的財産基本法(平成十四年十二月四日法律第百二十二号)
収録時点での最終改正:平成一五年七月一六日法律第一一九号
(定義)第二条
この法律で「知的財産」とは、発明、考案、植物の新品種、意匠、著作物その他の人間の創造的活動により生み出されるもの(発見又は解明がされた自然の法則又は現象であって、産業上の利用可能性があるものを含む。)、商標、商号その他事業活動に用いられる商品又は役務を表示するもの及び営業秘密その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報をいう。
この法律で「知的財産権」とは、特許権、実用新案権、育成者権、意匠権、著作権、商標権その他の知的財産に関して法令により定められた権利又は法律上保護される利益に係る権利をいう。
  • 著作権 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものに関する権利(著作権法)
  • 特許権 発明(自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの)に関する権利(特許法)
  • 実用新案権 物品の形状、構造又は組合せに係る考案(自然法則を利用した技術的思想の創作)に関する権利(実用新案法)
  • 意匠権 物品(物品の部分を含む)の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であつて、視覚を通じて美感を起こさせるものに関する権利(意匠法)
  • 商標権 標章(文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合)に関する権利(商標法)
  • 半導体集積回路配置利用権(半導体集積回路の回路配置に関する法律)
  • 育成者権(種苗法)
  • 不正競争行為を防止する権利(不正競争防止法)

「世界知的所有権機関を設立する条約」での定義は以下の通りです。

Convention Establishing the World Intellectual Property Organization
(Signed at Stockholm on July 14, 1967)
Article2 Definitions (vii)
"intellectual property" shall include the rights relating to:
– literary, artistic and scientific works,
– performances of performing artists, phonograms, and broadcasts,
– inventions in all fields of human endeavor,
– scientific discoveries,
– industrial designs,
– trademarks, service marks, and commercial names and designations,
– protection against unfair competition,
and all other rights resulting from intellectual activity in the industrial, scientific, literary or artistic fields.

産業財産権の発生には特許庁への出願や登録が必要です。著作権の発生には行政庁の処分は必要とされていません。つまり著作物が誕生すると、何らの手続きなしに著作権が生まれることになります。

著作権の概要

著作権著作者の権利(著作権)著作者人格権著作財産権(著作権)著作隣接権実演家人格権実演家の財産権レコード製作者の財産権放送事業者の財産権有線放送事業者の財産権
著作権の構成

「著作権」とは著作物から生じる権利であり、著作物を創作した時点で自然発生します。権利を得るための手続は一切必要ありません(無方式主義)。この点は産業財産権と大きく異なる部分です。しかし、重要な権利を保全する観点からは、一定の登録手続きを行うことが望ましい場合もあります(後述)。

「著作権」という言葉は場合によって様々な範囲の権利を指します。一般に、広義では著作物に関する権利、つまり著作者の権利と著作隣接権を併せた部分を指し、狭義では著作財産権の部分を指します。著作権法の中での「著作権」とは、この著作財産権を指します。

著作者の権利と著作隣接権は独立して作用します。従って両方を同時に侵害することもあり得ることになります。

公正な利用に留意しつつ、著作権を保護する目的は、文化の発展です(著作権法第一条)。例えば、あらゆる種類の引用・転載を全面的に禁止することは、ある意味では著作権を手厚く保護することになるかもしれませんが、社会全体にとっては既にある成果物を利用して新たな発展を促すことが出来ないという側面があります。逆にあらゆる転載・コピーを全面的に容認すれば、著作者の権利は無きに等しく創作意欲が生まれません。著作権法は、著作物の公正な利用方法と著作者の権利の保護を規定しています。

著作権の保護期間は、原則として著作者の生存年間及びその死後70年間とされています。

日本での著作権保護の内容には様々な国際条約が大きく影響しています。

著作物性

「著作物」は著作権法(2条1項1号)によって「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と定義されています。いわゆる作品とされているものであり、小学生の描いた絵画も著作物です。具体的にどの程度の創作性が要求されるかは、ケースバイケースで判断する他ありません。

  • 思想又は感情
  • 創作的
  • 表現
  • 文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属する

発明自体は著作物ではありません。発明は思想の創作であり、特許権はアイデアを保護するものであるのに対し、著作権は文章や絵画といった表現を保護するものです(但し、アイデアを文書や図画として創作的に表現したものは著作物となり得ます)。この差異は非常に重要なものであり、手段を誤ると自らの貴重な権利を失うことにもなりかねません(後述)。

著作物のうち保護を受ける著作物が6条に列挙されています。いずれかに該当するものが著作権法により保護されます。

著作者の国籍の条件
日本国民(わが国の法令に基づいて設立された法人及び国内に主たる事務所を有する法人を含む。以下同じ。)の著作物
著作物の発行地の条件
最初に国内において発行された著作物(最初にこの法律の施行地外において発行されたが、その発行の日から三十日以内に国内において発行されたものを含む。)
条約の条件
条約によりわが国が保護の義務を負う著作物

著作物のうち著作権の目的とならない著作物が13条に列挙されています。

著作権法 第十三条 次の各号のいずれかに該当する著作物は、この章の規定による権利の目的となることができない。
憲法その他の法令
国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人(独立行政法人通則法<平成十一年法律第百三号>第二条第一項に規定する独立行政法人をいう。以下同じ。)又は地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第一項に規定する地方独立行政法人をいう。以下同じ。)が発する告示、訓令、通達その他これらに類するもの
裁判所の判決、決定、命令及び審判並びに行政庁の裁決及び決定で裁判に準ずる手続により行われるもの
前三号に掲げるものの翻訳物及び編集物で、国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が作成するもの

著作物の種類

2条1項1号によって定義された著作物を10条1項において例示しています。

  • 言語の著作物
  • 音楽の著作物
  • 舞踏または無言劇の著作物
  • 美術の著作物
  • 建築の著作物
  • 図形の著作物
  • 映画の著作物
  • 写真の著作物
  • プログラムの著作物

先に述べたように、著作物は「思想又は感情を創作的に表現したもの」でなければならないので、例えば全ての建築物が著作物だという訳ではありません。およそ一般的でありふれた構造・形状の建築物は著作物とは言えないでしょう。

映画の著作物

映画館などで上映されるいわゆる映画にとどまらず、「映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ物に固定されている」ビデオゲームの影像部分なども含まれるとされます。

パックマン事件(東京地裁 昭和59年9月28日判決 昭和56年(ワ)第8371号 損害賠償請求事件)等参照。
東京地裁 平成11年5月27日判決 平成10年(ワ)第22568号 著作権侵害差止請求権不存在確認請求事件にも留意すること。

プログラムの著作物

「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したものをいう」(2条1項10号の2)。「その著作物を作成するために用いるプログラム言語、規約及び解法に及ばない」(10条3項)。プログラムは、特許法でも保護の対象となりえます。この場合は発明(アイデア)自体が保護されます。特許権の設定登録と著作権によって発明・表現の両面からの保護が可能になります。

その他、著作物として挙げられているものは以下の通りです。

二次的著作物
「著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物をいう」(2条1項11号)。
編集著作物
「編集物でその素材の選択又は配列によって創作性を有するもの」をいう(12条1項)。
データベースの著作物
「データベースでその情報の選択又は体系的な構成によって創作性を有するもの」である(12条の2 1項)。データベースについては2条10号の3に定義がある。

著作者

「著作者」とは著作物を創作した者であり、著作権法21条の複製権以下に列挙されている(支分権の束、bundle of rights)ように著作物を排他的独占的に利用する権利を有します。

職務著作(法人著作)

法人その他の使用者(法人等)も一定の要件の下で職務上作成する著作物の著作者たり得ます(15条)。なお、著作権法上の「法人」には「法人格を有しない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものを含む」(2条6項)とされています。また、職務著作該当性が満たされる場合には、財産権のみならず、著作者人格権も法人等に原始帰属します。

プログラムの著作物を除く著作物が職務著作となる(法人等が著作者となる)要件

  • 法人等の発意に基づき作成
  • 法人等の業務に従事する者が職務上作成
  • 法人等が自己の著作の名義の下に公表
  • 作成時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない

労働契約や就業規則において、法人等の名で公表しなくとも職務上の著作については当該法人を著作者とする旨の規定があれば、その規定が有効となります。

つまり、従業員(「法人等の業務に従事する者」15条1項)が法人の発意に基づき職務上作成した著作物については、法人等の名で公表するか、契約や就業規則に前述の規定があるか、どちらかが要件として整えば職務著作として法人が著作者となります。

「法人等の業務に従事する者」については、雇用関係にある者は当然として、法人等の指揮監督下において労務を提供するという実態にあり、法人等がその者に支払う金銭が労務提供の対価であると評価できるかどうかを、業務態様、指揮監督の有無、対価の額及び支払い方法等に関する具体的事情を総合的に考慮して判断すべきとされています。

(最判 平15.4.11 判時1822/133 RGBアドベンチャー事件。但し、当該判決は当事者間の関係が雇用関係に該当することにより職務著作と認定しているので、雇用関係以外の場合に15条1項の適用があるかどうかについて直接的に判示された訳ではない。)

プログラムの著作物が職務著作となる(法人等が著作者となる)要件

  • 法人等の発意に基づき作成
  • 法人等の業務に従事する者が職務上作成
  • 作成時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない

コンピュータプログラムについては、その他の著作物と異なり、法人の名での公表を要件とされず、従業員が職務上作成したプログラムの著作物は常に法人が著作者となります。

参考:特許法における職務発明

比較のために、特許法における職務発明について簡単に述べます。要件は以下の通りです。

  • 従業者等の発明
  • 使用者等の業務範囲内
  • 従業者等の現在又は過去の職務範囲内

使用者等の業務範囲に属さない発明(自由発明)や、使用者の業務範囲には属するが従業者等の現在又は過去の職務に属さない発明(業務発明)については予約承継することはできず、そのような契約、勤務規則等は無効です(特許法35条2項)。なお、使用者が特許を受ける権利を承継する場合には、相当の対価の支払いが必要です。

著作者の権利

著作者の権利著作者人格権公表権氏名表示権同一性保持権著作財産権(著作権)複製権上演・演奏権公衆送信権公の伝達権口述権展示権譲渡権貸与権頒布権二次的著作物の創作権二次的著作物の利用権補償金請求権私的録音録画補償金請求権教科書等掲載補償金請求権教育番組放送補償金請求権試験問題複製補償金請求権ビデオ等貸与補償金請求権
著作者の権利の構成

著作者人格権

著作者人格権は、以下の権利によって構成されます。

  • 公表権
  • 氏名表示権
  • 同一性保持権

著作者人格権は、著作者に固有の一身専属権です。従って譲渡や相続の対象とはなりません。また著作者の死亡によって消滅する権利です。しかし、死後においても著作者が生存しているとすれば著作者人格権の侵害となる行為はしてはならないとされています(60条)。

113条11項には名誉声望権が規定されており、これを毀損することは著作者人格権の侵害とみなすとされています。つまり、名誉・声望を著作者の人格的利益とみなして保護しています。

著作財産権

著作財産権は狭義の「著作権」であり、著作権法上もこの意味で「著作権」という言葉を用いています。著作権は以下の権利によって構成されます。

  • 複製権(支分権である出版権の設定を含む)
  • 上演・演奏権
  • 上映権
  • 公衆送信権
  • 公の伝達権
  • 口述権
  • 展示権
  • 譲渡権
  • 貸与権
  • 頒布権
  • 二次的著作物の創作権
  • 二次的著作物の利用権

頒布権は、劇場用映画の配給制度を前提に設けられたもので、映画の著作物に関する権利であり、譲渡と貸与の両方を対象とします。適法に譲渡された後も譲渡に関する権利は消尽しません。

但し、ゲームに関しては議論があります。

東京地裁 平成11年5月27日判決(平成10(ワ)22568)
大阪地裁 平成11年10月7日判決(平成10年(ワ)6979、平成10年(ワ)9774)を参照。

ゲームの頒布権についても劇場用映画のそれと何ら変わるところは無いとする見解と、公衆に提示することを目的としない映画の著作物(ゲームソフトの影像部分やビデオ・DVDなど)については、譲渡後に頒布権が消尽するという見解があります。

著作隣接権

著作権法では、著作者だけではなく、著作物を公衆に伝達する者の権利も定めています。これが著作隣接権と呼ばれるものです。実演家・レコード製作者・放送事業者・有線放送事業者について規定されています。実演家の権利については人格権が認められています。

実演家の権利

  • 録音権・録画権(91条)
  • 放送権・有線放送権(92条)
  • 送信可能化権(92条の2)
  • 譲渡権(95条の2)
  • 貸与権等(95条の3)

実演家の権利としては、上記の著作隣接権の他、下記の請求権(債権)があります。

  • 私的録音補償金請求権(102条1項)
  • レコード二次使用料請求権(95条)
  • 貸与報酬請求権(95条の2 3項)

レコード製作者の権利

  • 複製権(96条)
  • 送信可能化権(96条の2)
  • 譲渡権(97条の2)
  • 貸与権等(97条の3)

レコード製作者の権利としては、上記の著作隣接権の他、下記の請求権(債権)があります。

  • 私的録音録画補償金請求権(102条1項)
  • レコード二次使用料請求権(97条)
  • 貸与報酬請求権(97条の2 3項)

放送事業者の権利

  • 複製権(98条)
  • 放送権・再有線放送権(99条)
  • テレビジョン放送伝達権(100条)

有線放送事業者の権利

  • 複製権(100条の2)
  • 放送権・再有線放送権(100条の3)
  • 有線テレビジョン放送伝達権(100条の4)

著作物の利用

引用とは

S60.10.17 東京高裁 昭和59(ネ)2293(藤田嗣治絵画複製事件)判決によれば、引用とは、「報道、批評、研究等の目的で他人の著作物の全部又は一部を自己の著作物中に採録すること」であり、これは先例であるS55.03.28 最高裁 昭和51(オ)923(パロディモンタージュ事件)判決を踏襲するものです。「自己の著作物中に採録すること」であるから、著作権法上の引用の要件を満たす為には引用する側にも創作性が必要です。

引用の要件

著作権法及び判例上、引用の要件とされているものを次に挙げます。

著作権法
・既に公表されている著作物である(32条1項)
・公正な慣行に合致する(32条1項)
・報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内である(32条1項)
判例
・引用して利用する作品と、引用されて利用される作品とが明瞭に区別されている(明瞭区別性)
・引用して利用する作品と、引用されて利用される作品との間に主従関係がある(主従関係)
・引用される側の著作物の著作者人格権を侵害するような態様でない(著作者人格権の非侵害性)

上記の要件は、裁判例を見ても、ほぼ定着したと言えるでしょう。

しかし、特に主従関係については判断の難しい部分があり、何をもって主従となすのか必ずしも明確ではありません。判例では、「両著作物の関係を、引用の目的、両著作物のそれぞれの性質、内容及び分量並びに被引用著作物の採録の方法、態様などの諸点に亘つて確定した事実関係に基づき、かつ、当該著作物が想定する読者の一般的観念に照らし、引用著作物が全体の中で主体性を保持し、被引用著作物が引用著作物の内容を補足説明し、あるいはその例証、参考資料を提供するなど引用著作物に対し付従的な性質を有しているにすぎないと認められるかどうかを判断して決すべき」(S60.10.17 東京高裁 昭和59(ネ)2293 藤田嗣治絵画複製事件)とされています。

また、上記の要件とは別に、引用の必要性・必然性や引用が最小限度であることを引用の要件として求める説もあります。

これらの条件を満たして引用を行う場合には、出所明示の義務があります(48条)。出所を明示するには、一般に、著作物の題号及び著作者名等の表示が必要であると解されているようです。絶対音感事件控訴審判決では、出所明示せずに引用を行ったとしても、それ自体は直ちに著作権(複製権)侵害を構成しないが、出所明示そのものが「公正な慣行」であると認められる場合には、単に48条に反するのみならず、適法な引用に当たらないとしています(絶対音感事件 東京高裁 平13(ネ)3677、平13(ネ)5920 平成14年4月11日判決)。

S55.03.28 最高裁 昭和51(オ)923(パロディモンタージュ事件) 法三〇条一項第二は、すでに発行された他人の著作物を正当の範囲内において自由に自己の著作物中に節録引用することを容認しているが、ここにいう引用とは、紹介、参照、論評その他の目的で自己の著作物中に他人の著作物の原則として一部を採録することをいうと解するのが相当であるから、右引用にあたるというためには、引用を含む著作物の表現形式上、引用して利用する側の著作物と、引用されて利用される側の著作物とを明瞭に区別して認識することができ、かつ、右両著作物の間に前者が主、後者が従の関係があると認められる場合でなければならないというべきであり、更に、法一八条三項の規定によれば、引用される側の著作物の著作者人格権を侵害するような態様でする引用は許されないことが明らかである。
S60.10.17 東京高裁 昭和59(ネ)2293(藤田嗣治絵画複製事件) 著作権法第三二条第一項は、「公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。」と規定しているが、ここに「引用」とは、報道、批評、研究等の目的で他人の著作物の全部又は一部を自己の著作物中に採録することであり、また「公正な慣行に合致し」、かつ、「引用の目的上正当な範囲内で行なわれる」ことという要件は、著作権の保護を全うしつつ、社会の文化的所産としての著作物の公正な利用を可能ならしめようとする同条の規定の趣旨に鑑みれば、全体としての著作物において、その表現形式上、引用して利用する側の著作物と引用されて利用される側の著作物とを明瞭に区別して認識することができること及び右両著作物の間に前者が主、後者が従の関係があると認められることを要すると解すべきである。そして、右主従関係は、両著作物の関係を、引用の目的、両著作物のそれぞれの性質、内容及び分量並びに被引用著作物の採録の方法、態様などの諸点に亘つて確定した事実関係に基づき、かつ、当該著作物が想定する読者の一般的観念に照らし、引用著作物が全体の中で主体性を保持し、被引用著作物が引用著作物の内容を補足説明し、あるいはその例証、参考資料を提供するなど引用著作物に対し付従的な性質を有しているにすぎないと認められるかどうかを判断して決すべきものであり、

著作権の保護期間

  • 実名(周知の変名を含む)の著作物の場合は、死後70年まで
  • 無名・変名の著作物の場合は、公表後70年(死後70年経過が明らかであれば、そのときまで)
  • 団体名義の著作物の場合は、公表後70年(創作後70年以内に公表されなければ、創作後70年)
  • 映画の著作物の場合は、公表後70年(創作後70年以内に公表されなければ、創作後70年)

死後、公表後、創作後の期間の計算は、死亡・公表・創作の翌年の1月1日から起算されます。

実名または周知の変名の著作物で保護期間が死後70年である場合の計算式は次の通りです。

著作者の死亡が2000年10月24日だとすると、2001年1月1日から起算する。
2001 + (70 − 1) = 2070
2070年12月末日までが保護期間となる。

保護期間中でもその著作権者の相続人がいない場合は著作権は消滅します。

現行の日本の著作権法の規定だけを見るならば、保護期間の計算は単純とさえいえるかもしれませんが、実際は、諸外国の著作権法での保護期間、「サンフランシスコ平和条約(Treaty of Peace with Japan)」に基く「連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法律」による戦時加算、旧著作権法、琉球政府による旧著作権法改正(1961)などとの関係で非常に複雑となっています。また保護期間が世界大戦を挟む為に権利関係の調査が困難なことも多くあります。そのため、専門家によっても意見の分かれる場合があり、度々訴訟の提起されるところです。

Treaty of Peace with Japan CHAPTER V CLAIMS AND PROPERTY Article 15(c)

(i) Japan acknowledges that the literary and artistic property rights which existed in Japan on 6 December 1941, in respect to the published and unpublished works of the Allied Powers and their nationals have continued in force since that date, and recognizes those rights which have arisen, or but for the war would have arisen, in Japan since that date, by the operation of any conventions and agreements to which Japan was a party on that date, irrespective of whether or not such conventions or agreements were abrogated or suspended upon or since the outbreak of war by the domestic law of Japan or of the Allied Power concerned.

(ii) Without the need for application by the proprietor of the right and without the payment of any fee or compliance with any other formality, the period from 7 December 1941 until the coming into force of the present Treaty between Japan and the Allied Power concerned shall be excluded from the running of the normal term of such rights; and such period, with an additional period of six months, shall be excluded from the time within which a literary work must be translated into Japanese in order to obtain translating rights in Japan.

現在は日本も欧米と同じく死後70年を基本としていますが、この70年への延長は2018年12月30日のTPP11発効に伴うものであり、それ以前は死後50年でした。

日本は第二次世界大戦中の連合国の国民の著作物について充分な保護を与えなかったという理由から、「連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法律」に基づき、通常の期間に加えて、開戦から講和までの期間の分(約10年間)、保護期間が延長されました。

著作権の登録

著作物には登録制度が定められています。登録については、プログラムの著作物のみ別の扱いとなっています。

プログラムの著作物以外の著作物

  • 実名の登録(著作権法第75条)
  • 第一発行年月日等の登録(著作権法第76条)
  • 創作年月日の登録(著作権法第76条の2)
  • 著作権・著作隣接権の移転等の登録(著作権法第77条、第104条)
  • 出版権の設定等の登録(著作権法第88条)

申請書類の提出先は文化庁長官官房著作権課です。

プログラムの著作物については、他の著作物とは異なった扱いとなっています。

  • 創作年月日の登録(著作権法第76条の2)
  • 第一発行年月日等の登録(著作権法第76条)
  • 実名の登録(著作権法第75条)
  • 著作権の登録(著作権法第77条)

申請書類の提出先は指定登録機関たる一般財団法人ソフトウェア情報センターです。

先に述べた通り、著作権の発生自体には手続きを要しませんが、それゆえに権利関係が曖昧・不明となりやすいものです。第三者対抗要件の具備を企図する場合は、文化庁やソフトウェア情報センターへの登録が有効な手段となる場合もあります。

また他の知的財産権としての保護、確定日付の付与、技術的手段による保護など、多角的総合的に保護手段を検討する必要があります。更に、著作物を利用する者にとってフェアで分かりやすい権利表示や、財産権譲渡・利用許諾の手続きの簡便さが求められるでしょう。

著作権の侵害

侵害と訴訟

実際の争いの中では、それが著作物であると言えるのかどうか自体が争点となることも多くあります。

産業財産権との違いとして、依拠の挙証責任が挙げられます。侵害を訴え出る原告側としては、被告がオリジナルに接しているはずであることを合理的に説明出来なければなりません。逆に侵害したとされる被告側は、そのような著作物の存在を認知していなかったと主張するケースが多くあります。

著作者などは著作権侵害者に対して差止請求や損害賠償請求を行うことができますし、侵害者には刑事罰が科せられることもあります。

親告罪と非親告罪

著作権侵害等については親告罪とされていますが、著作権法上、非親告罪の規定も存在します。

親告罪とは、検察官が公訴を提起するための要件として、被害者その他一定範囲の者の告訴を必要とする犯罪です。告訴は公訴提起の要件(訴訟条件)であって、捜査の要件ではありません。未だ告訴のない場合においても捜査自体はあり得ます(犯罪捜査規範第70条)。

親告罪とされるもの

第119条第1項
著作権、出版権又は著作隣接権に対する侵害
第119条第2項第1号
著作者人格権又は実演家人格権に対する侵害
第119条第2項第2号
営利目的による自動複製機器の供与
第119条第2項第3号
侵害物品を頒布目的により輸出・輸入・所持する行為
第119条第2項第4号
プログラムの違法複製物を電子計算機において使用する行為
第120条の2第3号
権利管理情報営利改変等
第120条の2第4号
国外頒布目的商業用レコードの営利輸入等
第121条の2
外国原盤商業用レコードの無断複製
第122条の2第1項
秘密保持命令違反

非親告罪とされるもの

第120条
著作者・実演家死後の人格的利益の保護侵害
第120条の2第1号及び第2号
技術的保護手段を回避する装置・プログラムの公衆譲渡等
第121条
著作者名詐称複製物の頒布
第122条
出所明示の義務違反
第123条第2項
2018年12月30日施行の改正(TPP11整備法)により追加。有償著作物等を原作のまま複製・公衆送信し、著作権者等の得るべき利益を不当に害する場合など、一定の要件を満たす侵害は非親告罪の対象となる

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判例集

入門から問題意識まで

新書版で手頃な入門書。

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  • 〈海賊版〉の思想 ― 18世紀英国の永久コピーライト闘争 山田奨治(みすず書房)ISBN-13: 978-4622073451 Copyrightの歴史。話題の良書。このサイトも含めて、現代日本の著作権法のみについて語られることも多いですが、著作権とはそもそも何だったのかと考えると新たな発見があるかもしれません。
  • インターネットの法と慣習 かなり奇妙な法学入門 白田秀彰(ソフトバンク新書)ISBN-13: 978-4797334678 「変人」を自称する学者によるネット時代の法学。Hot Wiredの連載をまとめたもので、くだけた文体になっています。この点については好みが分かれるようですが、特定の勢力を擁護する政治的発言から距離を置き、文化と創作の根本を自然体で考える姿勢の表れではないでしょうか。
  • コピーライトの史的展開 白田秀彰(信山社)ISBN-13: 978-4797221299 Copyrightの歴史。前出の著者による博士論文。
  • 著作権とは何か ― 文化と創造のゆくえ 福井健策(集英社新書)ISBN-13: 978-4087202946 著作権に興味のある方なら、これは是非読んで頂きたい。模倣とパロディ、芸術を愛する弁護士が語ります。本当に芸術を愛する実務家というのは非常に少ないのではないでしょうか。自信を持ってお勧め出来る書です。
  • コモンズ ローレンス・レッシグ(翔泳社)ISBN-13: 978-4798102047 著者ローレンス・レッシグ教授の2002年オライリー・オープンソースコンベンション(OSCON)基調講演「Free Culture」が、Creative Commons帰属ライセンスに基づく日本語字幕フラッシュ版や日本語テキスト版で公開されており、自由に閲覧出来ます。

音楽ビジネス

作詞・作曲・編曲・実演・録音等の音楽関係です。

その他

その他、刊行年の比較的浅いものなど。参考までに挙げておきます。

当職の関連業務

  • 著作権に関する講演
  • 著作権に関する相談(保護・活用など)
  • 著作権に関する調査
  • 著作権に関する契約書の作成
  • 文化庁への登録
著作権に関する入門セミナー(報酬無料)を行っています。
少人数でも構いません。実費のみご負担いただきます。→ 詳しくはこちら
更新履歴 2004-12-01 このページの初出
2005-01-26 増補改訂
2005-02-26 増補改訂
2005-05-19 増補改訂
2005-05-22 増補改訂
2006-04-25 増補改訂
2007-04-09 増補改訂
2007-12-06 改訂
2007-12-10 増補改訂
2008-03-10 増補改訂
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2014-03-05 改訂
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