クーリングオフの基礎知識

訪問販売,電話勧誘販売,マルチ商法,内職商法等はクーリングオフにより契約解除出来ます。

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クーリングオフ制度とは

勧誘員・販売員は巧妙な話術を操るのに対して、一般的に消費者は脆弱です。そこで相手の話術や雰囲気に呑まれてついつい契約してしまった消費者を救う制度がつくられました (割賦販売法)。その後特定商取引法 (旧訪問販売法)によって、現在のように充実した制度となりました。それがクーリングオフです。頭を「冷やして」もう一度じっくり契約について考える猶予が法律によって定められた訳です。

クーリングオフはその要件として、定められた期間内に書面で契約解除しないと、せっかくの権利が利用出来なくなります。そこで内容証明郵便(配達証明と内容証明を付けた書留郵便)によって契約解除する書面を発信した証拠とするのです。

もっと費用を安く抑えたい場合は、配達記録や簡易書留のハガキで契約解除する方法もあります。この場合は、郵便局に文面の内容が残らないので、自分でハガキの両面コピーをとっておく必要があります。これでも証拠として主張することは出来ますし、簡便な方法と言えます。余程悪質な業者でない限り、大抵の場合はこの方法でうまくいくでしょう。もっとも、内容証明郵便でも郵送にかかる費用はほとんどの場合2000円以内で済むので、契約金額と契約解除の重要性を考えると、必ずしも良い方法ではないかもしれません。

クーリングオフはいわゆる悪徳商法や悪質商法と呼ばれるものに対してだけ適用される訳ではありません。とにかく要件を満たせば、相手側の同意無く契約解除できます。

代表的なクーリングオフ規定

クーリングオフ類似の制度として以下のようなものもあります。

クーリングオフの要件

適用される商品権利役務

間違えやすいのですが、通信販売はクーリングオフ出来ません。なぜなら、通信販売の場合は消費者が購入申込にあたって冷静にじっくり考える猶予があるからです。契約解除や返品が難しい場合も多いので、契約前に信頼できる業者かどうか充分確かめる必要があります。 (通信販売についてはJADMA社団法人日本通信販売協会等を参照)。訪問販売や電話勧誘販売には適用されます (政令で指定された商品、権利、役務についてのみ)。詳しくはクーリング・オフできる商品・権利・役務を参照。

権利行使できる期間

期間については、書面の交付を受けてから、訪問販売や電話勧誘販売などが8日間、連鎖販売取引(マルチ商法)や内職商法などが20日間となっています。

但し、この期間を過ぎても、書面に不備があったり、嘘を言ったり脅したりしてクーリングオフを妨害した事実があれば、クーリングオフ出来ます。諦める前に検討してみる価値はあります。

悪徳商法の類型

最初に断っておきますが、ここに紹介する全ての類型が無条件に違法であるという訳ではありません。通信販売、訪問販売や内職などでは、全く正当な商行為を行う業者とそうでない業者に分かれます。また、以下の類型のうち複数にまたがるものも少なくありません。

悪徳商法に共通すること

当たり前と思われるかもしれませんが、悪徳商法だと気付いたときには、絶対に契約してはなりません。悪徳商法に共通する特徴は遠慮や妥協、恐怖、親近感といった人間心理を巧みに利用する事です。「断ると怖そうだから今回だけ」などと考えていると、あなたは「まんまと引っ掛かったカモ」としてリストアップされてしまいます。そういったリストは他の業者にも出回ることでしょう。しばらくすると多数の悪徳業者のターゲットにされる可能性は非常に大きいでしょう。また後に解約するときには、多少なりとも労力と金銭的負担がかかります。初めから契約しないこと、それが一番大事です。しかし、それでももし一度契約してしまったら、申込の撤回、契約の解除等の事後処置をきちんと行って、次回からは毅然として断ることです。 (早期対処をお薦めします。対処が遅れると解約できなくなる可能性があります。)また、証拠となる書類・メール・録音テープ・日記・メモ等を保存しておくことをお薦めします。

通信販売等では、契約する前に加盟団体等を確認して下さい。チラシ、電話やホームページの情報だけでは不充分である可能性が大きいと思われます。加盟団体については、信頼できる実在の団体であるかどうかまで確かめる必要があります。 (→ JADMA 社団法人日本通信販売協会 )

架空請求 (出会い系サイト・アダルトサイト・ダイヤルQ2等)

身に覚えの無い請求がメール・郵便・電話等で突然やってくる、そんな事例が増えています。払わないと更に利子が付くぞ、回収員が自宅や勤務先に出向くぞと脅してみたり。こういった架空請求 (不当な請求)は、何らかの名簿を元に手当たり次第に請求しています。そもそも支払い義務の生じるべき契約自体が存在しないのだから、毅然として対応して下さい。「怖いしこれ位の金額を支払って済むならいいや。」と不当な請求に応じてしまうと、あなたは犯罪者達のカモリストに載せられてしまいます。別の業者の名前で再び請求される可能性があります。

郵便での請求の場合、業者の名簿には、少なくとも宛先になっている住所と氏名が記載されていることになります。
電子メールでの請求の場合、業者の名簿には、少なくとも宛先になっているメールアドレスが記載されていることになります。
それ以上の情報を業者に与えないで下さい (郵便での請求に対して、発信者番号通知で電話での問い合わせをするなど)。

ダイヤルQ2関連の請求はまずNTTから行われるので、いきなり業者から請求されれば、ランダムに送信された根拠の無い架空請求だと思われます。
携帯電話での所謂「ワン切り」は、着信記録に残る見知らぬ番号に掛け直さないことが一番ですが、もし掛けてしまっても、何らかの「登録行為」をしていないなら (ボタンを押さず流れている音を聞いていただけなら)当然電話代はかかりますが電話会社以外の業者に対する支払義務はありません。 (登録自体にも契約としての有効性の問題がありますが。)

とにかく手当たり次第に請求するという方法は、資金も要らず簡単に出来、支払に応じてしまう人も少なからず存在するので、今後も後を絶たないでしょう。

ネガティブオプション

注文していない商品を勝手に送りつけて代金支払請求するという商法。商品が届いた日から14日間 (相手に引き取りの請求をした場合は7日間)保管すれば、後は自由に処分出来ます。ところが、最近の悪質業者は心得ていて、代金引換で送りつけてくるのです。代金を回収するのは本物の宅配業者や郵便局員。代金引換の場合、一度支払ってしまうと返金は難しい (まず無理)ので、注文に心当たりの無い場合は確認するまで受取を留保しておく方がいいでしょう。 (同居親族等が注文したんだろうと決め付けないこと!)

内職商法 / モニター商法

内職商法の例・・・あて名書き、パソコンやワープロでの入力、テープおこし
モニター商法の例・・・パソコン、ワープロ、浄水器、化粧品、エステティックサロン、健康器具各種、ふとん、着物

内職商法やモニター商法は、業務提供誘引販売と呼ばれます。業者が提供または紹介する業務をすれば収入 (業務提供利益)が得られると勧誘する一方、その業務に使用する商品や役務の契約 (特定負担)をさせます。

内職商法の場合、例えばパソコンデータ入力の場合は、入力業務により収入を得ようとすればその前に登録料を支払ったりパソコン購入契約を結ばなければならないというものがあります。すぐに元が取れるとか実績があるとか言葉巧みに勧誘しますが、本当の目的は登録料やパソコンの販売にある訳です。気付いた頃にはもう業者の逃げた後です。

催眠商法 (SF商法)

催眠商法の場合、例えば無料抽選会だとか先着20名様無料プレゼントと謳って、とあるビルの一室に大勢の客を集めます。実際に無料プレゼントが配られ、中にはサクラも混じっていますから、閉め切った室内には異様な熱気がこもります。弁の立つ販売員は巧みに客の購買意欲を高め、頃合を見計らって「目玉商品」、つまり目的の商品を販売します。正常な判断力を失った客は、我先にと殺到するのです。主にふとんだとか健康器具が販売されているようです。

無限連鎖講 (ねずみ講) / 連鎖販売取引 (マルチ商法)

無限連鎖講は一般にねずみ講と呼ばれ、後順位者の金品を先順位者が受領するピラミッド型配当組織を形成します。必ず破綻することは明らかです。新規加入者をいつまでもねずみ算式に増やしていくのは絶対に不可能だからです。従って法律で禁止されています。

無限連鎖講の防止に関する法律 (昭和五十三年十一月十一日法律第百一号) 収録時点での最終改正 : 昭和六三年五月二日法律第二四号

(目的)
第一条 この法律は、無限連鎖講が、終局において破たんすべき性質のものであるのにかかわらずいたずらに関係者の射幸心をあおり、加入者の相当部分の者に経済的な損失を与えるに至るものであることにかんがみ、これに関与する行為を禁止するとともに、その防止に関する調査及び啓もう活動について規定を設けることにより、無限連鎖講がもたらす社会的な害悪を防止することを目的とする。

(定義)
第二条 この法律において「無限連鎖講」とは、金品 (財産権を表彰する証券又は証書を含む。以下この条において同じ。)を出えんする加入者が無限に増加するものであるとして、先に加入した者が先順位者、以下これに連鎖して段階的に二以上の倍率をもつて増加する後続の加入者がそれぞれの段階に応じた後順位者となり、順次先順位者が後順位者の出えんする金品から自己の出えんした金品の価額又は数量を上回る価額又は数量の金品を受領することを内容とする金品の配当組織をいう。

(無限連鎖講の禁止)
第三条 何人も、無限連鎖講を開設し、若しくは運営し、無限連鎖講に加入し、若しくは加入することを勧誘し、又はこれらの行為を助長する行為をしてはならない。

マルチ商法は商品の再販売によるマージンを得られるピラミッド型販売組織を形成します。「特定商取引に関する法律」により「連鎖販売取引」として厳しく規制され、過去において行政指導は行われていますし、マルチ商法の外形をとっていても違法性ありとされた事例もありますが、現時点ではマルチ商法と呼ばれているというだけで全て違法だとは断定出来ません(適法だとも断定出来ません)。ねずみ講と違って組織そのものが破綻するとは限りません。しかし破綻しないその理由(どこからお金が出ているのか)をよく考えてみるべきです。

ここでは、ねずみ講とマルチ商法は似て非なるものとして扱いましたが、これらは法律上の用語ではなく、一般にそれほど厳密な言葉の定義があるわけではありません。他にも、ネットワークビジネス (NB)、マルチレベルマーケティング (MLM)、マルチまがい商法等さまざまな呼称があります。実態に即して呼び分けられている訳ではありません。ただねずみ講というと明らかに違法な無限連鎖講を指すことが多く、そうでは無いものをマルチ商法などと呼ぶことが多いようです。また、マルチ商法とマルチまがい商法を区別する向きもありますが、先にも述べたように、これらの定義は曖昧で、法律上の用語でもないので、呼称を特段区別する意味があるとは思えません。呼称よりも実態に応じて判断するべきでしょう。

一般的なクーリングオフ期間は8日間ですが、マルチ商法に関しては20日間となっています。20日以内なら商品代金や加入料金を取り戻せます。

勧誘する側は契約や取引について詳細に事実を告げる義務が有ります (故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為をしてはなりません)。また大勢で取り囲んだりして脅すことは禁止されています。マルチ商法は消費者が同時に勧誘者になるので注意して下さい。自分が勧誘した消費者に商品を再販売する際は、今度は勧誘者自身がこれらの義務に従う必要があります。それ故にトラブルが多発するのです。

特定商取引に関する法律 (昭和五十一年六月四日法律第五十七号) 収録時点での最終改正 : 平成一四年四月一九日法律第二八号

(禁止行為)
第三十四条  統括者又は統括者がその統括する一連の連鎖販売業に係る連鎖販売取引について勧誘を行わせる者 (以下「勧誘者」という。)は、その連鎖販売業に係る連鎖販売取引についての契約 (その連鎖販売業に係る商品の販売若しくはそのあつせん又は役務の提供若しくはそのあつせんを店舗その他これに類似する設備 (以下「店舗等」という。)によらないで行う個人との契約に限る。以下この条において同じ。)の締結について勧誘をするに際し、又はその連鎖販売業に係る連鎖販売取引についての契約の解除を妨げるため、次の事項につき、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為をしてはならない。

 一 商品 (施設を利用し及び役務の提供を受ける権利を除く。)の種類及びその性能若しくは品質又は施設を利用し若しくは役務の提供を受ける権利若しくは役務の種類及びこれらの内容に関する事項
 二 当該連鎖販売取引に伴う特定負担に関する事項
 三 当該契約の解除に関する事項 (第四十条第一項から第三項までの規定に関する事項を含む。)
 四 その連鎖販売業に係る特定利益に関する事項
 五 前各号に掲げるもののほか、その連鎖販売業に関する事項であつて、連鎖販売取引の相手方の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの

2  連鎖販売業を行う者 (統括者又は勧誘者以外の者であつて、連鎖販売業を行う者に限る。第三十七条及び第四十条を除き、以下同じ。)は、その統括者の統括する一連の連鎖販売業に係る連鎖販売取引についての契約の締結について勧誘をするに際し、又はその連鎖販売業に係る連鎖販売取引についての契約の解除を妨げるため、前項各号の事項につき、不実のことを告げる行為をしてはならない。

3  統括者、勧誘者又は連鎖販売業を行う者は、その統括者の統括する一連の連鎖販売業に係る連鎖販売取引についての契約を締結させ、又はその連鎖販売業に係る連鎖販売取引についての契約の解除を妨げるため、人を威迫して困惑させてはならない。


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2003-06-12 このページの初出
2005-05-24 増補改訂

WSFE190111204718

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